December 24


「――なんのご用かしら」
 しつこいチャイムに玄関へと向かえば、目の前に立っていたのは、よれよれの赤スーツを着た、貧相なサンタクロース。
「や、やあ、ジェシカ」
 ずり落ちた赤い帽子をぐいと直せば、肩から提げていた鞄がずるっと落ちる。どこからこの格好で来たのやら、汗のせいで付け髭まで落ちかけてるわよ?
「まだイブよ? どうぞお引取り下さい」
「ちょ、ちょっと待って、話を聞いてくれ!」
 閉めようとしたドアをがしっと掴んで、その貧相なサンタクロースは今にも泣きそうな顔で、あれどこだっけとポケットをごそごそ、鞄をごそごそ。まったくもう、落ち着きのないところも、探し物が下手くそなところも、ちっとも直ってないんだから。
「まだ?」
「ああ、やっと見つけた。えっとえっと――『すまなかった、僕が悪かったんだ。帰ってきてくれ、僕の天使』!」
 殴り書きのカンニングペーパーを見ながら言ったかと思えば、よれた包装のプレゼントを突き出してくるなんて――ああもう、本当に……!!
「変わってないわね、あなたは。出会った時からそのまま。ちっとも大人にならないんだから」
 キャンパスで出会った彼は、話下手でおっちょこちょいで、夢見がちで――。
 それでもいつだって、私をドキドキさせてくれたわ。いろんな意味でね。
「君も変わらないよ、ジェシカ。こんな僕を見捨てずに、ずっとそばにいてくれたのは君だけだ。だから、お願いだ。帰ってきてくれ」
「これからも見捨てないとは限らないわよ?」
 意地悪をして言ってみたら、彼ったらそれはもう情けない顔をして、今にも倒れそうになったから。
 仕方ないわね。今回は折れてあげましょうか。
 一日早くプレゼントを届けに来た、あわてんぼうのサンタクロースに免じて。

「さあ、サマンサにプレゼントを届けなきゃ!」
「困ったわ、用意できなかったのよ」
「大丈夫! 僕がサンタで、君がプレゼント。サマンサは頼りになる僕のトナカイだ。なんて素敵な家族なんだろう!」
 子供みたいに笑うあなたを見ていると、私も子供の頃に戻ったみたい。
 サンタとプレゼントとトナカイが揃っているなら、今年のクリスマスは素敵なクリスマスになりそうね。

 Merry Christmas! My Dear Santa Claus.

Story by seeds



 どうにか無事、大団円(^^ゞ
 このあと自宅へ戻って、三人で家族水入らずのクリスマスディナーになったことでしょう。

 今年もAdvent Calendarにお付き合いくださいましてありがとうございましたm(__)m



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